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現代萌衛星図鑑第2集 [本と雑誌]

今月のSFノルマはしきしまふげんさん、へかとんさん。

実際の宇宙機を紹介した本ですのでF(フィクション)ではないのですが、もはや現代は、かつて夢見たSFの時代に追いついてきており、その先端としてのこの本はSFの勉強として十分と思います。

さて第二集です。

2014年出版の本ですので、大体二年弱前の日本御宇宙機を紹介した本になります。

とりあげられているのは、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還、月周回衛星「かぐや」、陸域観測衛星「だいち」、超小型地球観測実証衛星「ひとみ」、金星探査機「あかつき」。

そしてあの、小惑星探査機「はやぶさ2」

どれ一つとっても、日本が誇る子達です。

今回は、昨今主流になりつつあり、相乗り衛星のひとつとして「ひとみ」が取り上げられているのも面白いです。

相乗り衛星は比較的低コストで宇宙に送り出せるので、実に様々な人や学校、企業や団体がバリエーション豊かな衛星を送り出しています。

そのあたり興味はありつつも、きちんとした記事を読んだことがなかったので、今回よくまとめられた記事を読めたのは得難い機会でした。

このお二人がコミケで出された同人誌から僕の宇宙機好きは始まっていますが、好きと言っても技術的に難しい話はちんぷんかんぷんなので、この本のように読みやすく切り絵にまとめられている本はうれしいですね。

萌え衛星ということで、それぞれの宇宙機がかわいらしく擬人化されているのも魅力。

フルカラーの冊子となりますので彩鮮やかに宇宙機たちや、彼ら彼女らがカメラに収めた宇宙の写真を楽しむことができます。

この本の魅力としてhもう一つ、宇宙機だけでなく、それを取り巻く人々や、ファンの人たちの活動や声援も感じられるあたり、宇宙機が外からどう見られているか、という視点も見れるのが楽しいです。

自分も声援を送っている一人なので、そうそうこんな感じだよ、と共感する部分も多々あり。

読み物としても面白い一冊でした。

リアルタイムから少し遅れて読んだので、まとめられている記事から少し先の時代を生きている身としては、「あかつき」ミッションのその後についてや、「はやぶさ2」の打ち上げ成功などのニュースも懐かしく思い出しながら読むのも楽しかったです。


そう考えると、宇宙開発というのは、歴史の中のと多い出来事ではなく、まさにリアルタイムで進んでいるのだなあと実感できるのもよいですね。

大変良い本、よい読書でした。

読み始めたら一気に読んでしまった、おもしろかったー。


現代萌衛星図鑑 第2集

現代萌衛星図鑑 第2集

  • 作者: しきしまふげん
  • 出版社/メーカー: 三才ブックス
  • 発売日: 2014/11/19
  • メディア: 単行本



火星の人(下) [本と雑誌]

今月のSFノルマは先月に引き続きアンディ・ウィアー。

先月読んだのの下巻ですね。

起死回生のサプライ送付ミッションが失敗に終わり、火星に一人残されたマーク・ワトニーの命はまさに風前の灯火。

それでも彼も、彼をバックアップするNASAはあきらめないという。

実にあきらめの悪い男たちの物語がどのような結末を迎えるかは、実際読んでいただくのがよいかと。

映画とは若干違う展開なので映画見た人でもまた違った面白さを見つけることができます。

上巻では火星での農場建設シミュレーションが山場ですが、下巻では打ち上げ船への超長距離旅行が山場となります。

解説で「火星に居れば放っておいても勝手に危機と山場がやってくる」とあるように、生存するだけで難しい環境でのサバイバルは試練の連続です。

そのひとつひとつを、多少幸運に恵まれすぎてるきらいはありますが、説得力のある手段で乗り越えていくのは読んでいて予測がつかずに面白かったです。

一通り読んでみると、映画は原作にかなり忠実に描かれていたのだなあと驚きました。

この手の作品は原作からかけ離れたものになることも多いですが、「オデッセイ」は、尺の都合でのエピソードの省略や、よりドラマチックなシチュエーションへの演出は見られるものの、ほぼ原作を忠実に辿っています。

映画を楽しめた人なら小説も存分に楽しめるのではないかと思います。

大変良い読書でした。

さて来月は何を読もうか。

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



火星の人(上) [本と雑誌]

今月のSFノルマはアンディ・ウィアー。初めて読む作家さんです。

過日に公開されたSF映画「オデッセイ」が、もお至極面白かったので原作読んでみました。今月は上巻、来月下巻ですね。

マーク・ワトニーは、第三次火星有人探査チームのクルー。滞在わずか6日目にして大嵐に見舞われ撤退したチームに、不慮の事故で置き去りにされ、火星上でたった一人残されることになります。

幸いにしてNASAが熟慮に熟慮を重ねた装備は嵐を耐えきり、当面の生存には問題ありません。ですが地球から火星はあまりに遠い。

水と空気はどうにかなるが、どう計算しても地球からの第一便が最速で届く遥か前に彼は餓死する。

かくして地球との連絡も立たれた状態で、彼はたった一人、サバイバルを開始するのです。


大筋は映画で公開されているので省きますが、読んでいてウウムとうなるのは、まったくのハプニング続きの偶然の重なりのように見えて、その実緻密な計算に裏打ちされた、ガチの火星生存シミュレーションでしょうか。

まず探査6日目と早期に孤立したことで、運び込まれていた食料や何やらの消耗品は、ワトニー一人にとってはずいぶんと余裕があります(それでも食料は圧倒的に足りないのですが)

またたやすく絶望するような状況ながら、それでも常に行動をし続けるモチベーションを持てる人格として、ワトニーという青年をデザインしたのは理にかなっています。

彼は人並みに悪態をつき、わがままを言い、ブラックジョークや下ネタを連発しますが、一方で絶望に強いメンタリティを持ち、創意工夫に優れ、一方で冷静に状況を分析して為すべきことを1つずつつ重ねていくことを苦としない性格です。

まさにサバイバーとしては理想的と言えるでしょう。そしてそういうメンタリティだからこそ、小説の主人公として実に上質なエンターテインメントを提供してくれるのです。

物語は緻密に設計、構築されたシミュレーションの上に、わとにーというキャラクター、NASAクルーの死に物狂いの尽力。世界中の人々の関心。

そしてワトニーを結果的に置き去りにしたアレス3クルーで組み立てられるのです。

これで面白くならないはずがない。割と時間を忘れて読みふけってしまいました。

実に良質の読書でした。お勧めです。

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: アンディ・ウィアー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫



臨機巧緻のディープブルー [本と雑誌]

今月のSFノルマは小川一水。

読んでみたら前に読んだ本の前のエピソードでした。読む順番間違えたかと思いきや、先にあっち読んでもそれはそれでシチュエーションが面白かったので損した気にはならず。

「あまねく知を求めて」宇宙を知る事を目的に活動するダーウィン機関の第五艦隊が舞台。

主人公のイシヅカタビトは、「自分が何を撮ればよいのか」なんとなくわからずに、ただカメラを構える新人の随行カメラマンです。

今回艦隊は、未知の知性種族が2陣営で衝突を始めている星系にたどり着き、様々なことを明らかにしながらファーストコンタクトを求めていきます。

「知る」というテーマが主題なので、展開される文明や生物相。異星人の思考形態などが次々に明らかになっていく展開は、読んでて好奇心を掻き立ててくれます。

そして交流のブレイクスルーになるのがタビトなわけですが。割と直感で行動しながらいろいろなことに入っていき、「撮ること」「伝える事」を軸にコミュニケーションを作り上げていくのはなかなかに新鮮で面白いです。

相棒のAIポーシャがまたいい女房役で、いろいろとわきが甘い彼をよく補佐しています。

今回、話の展開上のどんでん返しがあるのですが、それが思いもよらぬ方向からでして、刺激的で面白かったです。

設定の広がりも想像力を刺激してくれますし、ストーリーの展開も飽きさせない感じですんなり読めました。

小川先生らしく、読みやすい感じですがその奥に大きな広がりを感じさせてくださる良作でした。

面白かったです。お勧め。

臨機巧緻のディープ・ブルー (朝日ノベルズ)

臨機巧緻のディープ・ブルー (朝日ノベルズ)

  • 作者: 小川一水
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/10/18
  • メディア: 単行本



コンタクト(下) [本と雑誌]

今月のSFノルマは、先月に引き続きカール・セーガン。

映画化された小説の下巻です。

上巻でメッセージの受信と世界的な解析プロジェクトが発展する中、下巻ではついにメッセージの解読が成し遂げられ、巨大な「マシーン」の建造が進んでいくことになります。

紆余曲折を経て、ヴェガ星方面から発信された図面をもとに、機能も定かではないマシーンの建造が決定されます。

主人公の電波天文学者エリーは、この計画に参画しながら、様々な人と出会い、思いを巡らせます。

政界、宗教界、科学界すべてを巻き込んだうねりをはらみつつ、ついにマシーンは完成。エリーはイレギュラーから、望んでいた、用意された5つの座席の一つを占めることとなります。

マシーン起動により直面する脅威の事象は、エリーたち五人の科学者に大きな刑事と示唆を与え、すべては何もなかったかのように、痕跡一つ残さず終わってしまいます。

「何も起きなかった」

地球側の観測からはそう結論付けるほかはなく、5人は批判の矢面に立たされることになります。

ですが、彼女たちは自分たちの得たものを信じ、次なる可能性を紐解くために動くのです。


まあ細かいところは読んでいただくとして、下巻では、読んでいてかなり意表を突かれる展開が待っていました。

映画でも、また上巻でも、「メッセージ」はヴェガ星方面から発信された一連の電文のことを指しているので、読みながらそれのことしか考えていなかったのですが。

下巻では、話が進むにつれて「メッセージ」というものが、実は多様な意味を持っていることが明亜にされていきます。

もちろん、宇宙からの電文はそうなのですが、これまでつぶさに描かれてきたエリーの人生から受け取れるメッセージ、過去からのメッセージ、超越した何者かかkらのメッセージ。

そして、カール・セーガンその人から、読者に向けたメッセージという意味もありました。

青い鳥は、振り向けば実は、そこにいるのかもしれません。

最後に示された、それまでは思いもよらなかったところに秘められていた「真円」というメッセージ。

読み終えた瞬間、やられたー、という、気持ちの良い読後感を味合わせていただけました。

それまで延々と書き連ねられた事柄が一気に組みあがっていく下りは、なんとも小気味よいものでした。


非常に面白く、得るものの多い読書でした。

お勧めです。

コンタクト〈下〉 (新潮文庫)

コンタクト〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: カール・セーガン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/07
  • メディア: 文庫



コンタクト(上) [本と雑誌]

今月のSFノルマはカール・セーガン。

たまさまWOWOWで見た映画がすこぶる面白かったので原作に手を出してみました。

映画とは全く違う内容でしたが、まあ映画化なんてのはそんなもんです。

幼いころからエレクトロニクスにきょうみがあり、なんやかやそ電波天文学の道に進み、ETI(地球外知性探査)に従事している女性博士、エリーが主人公。

前半は彼女の人生を丹念に追うことで彼女の人格や考え方がどのように形成されたか丁寧に描かれています。

中盤で、主題となるヴェガ星からの<メッセージ>。すなわち有意通信が届きます。

後半はそれに対する地球各国や科学者たちの動きを、これまた丹念に描いています。

SF小説ですが、ジェイムズ・P・ホーガンのような、広げた風呂敷を順繰りに開陳していくような内容ではなく、SF設定は悪案で地球外からの通信ぐらいで、それを下敷きにした科学や宗教、政治、そして登場人物たちの人間関係などの話題や動きをじっくり描いていく小説です。

スペクタクル的な展開はほぼなく、淡々と時間を追っていく小説ですがそれだけに、なんというかリアリティというか、身近な印象を受けるのが、SFとしては逆に新鮮で面白いですね。

この辺は映画でも踏襲していたので、読みながら、なるほど映画はよく整理されているなとも思いました。

今回は上巻ですが、下巻になると、だんだん事態が動き出すのでしょう。

下巻を読むのが楽しみですね。

コンタクト〈上〉 (新潮文庫)

コンタクト〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: カール・セーガン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/07
  • メディア: 文庫



青い星まで飛んでいけ [本と雑誌]


青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)

青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫


今月のSFノルマは小川一水。

年代も掲載しもばらばらだった短編の短編集とのことですが、楽しく読ませていただきました。

解説によると「小川一水流の恋愛SF短編集(意訳)」なのだそうだが、読み終えてみると、なるほど確かに形の違う、SF拡大された恋愛短編集と言えなくもないかと思います。

収録された短編は、多かれ少なかれ両性の人物(性別がなかったり人でなかったりというのもありますが、まあ概念として)が出会い、すれ違ったり理解しあったりしながら一つの結末を迎えるストーリーになっています。

1編目の「都市彗星のサエ」などは、とある水資源採掘衛星に自然発生的に発展した都市コロニーの、一般家庭の少女サエと、インフラ整備を家業とする一族に生まれた少年のお話ですので、そのままボーイミーツガールものです。

こちらは外の世界を願ってやまない二人が、それぞれの立場の違いを対比させながら進行するストーリーが大変面白かったです。

5編目の「守るべき肌」などは、ある意味究極のMMORPGエミュレーション小説ともいえるような内容でした。電子演算機上の人格として不老不死を達成し、繁栄を謳歌している人類の少年のもとに、プログラム上の存在のはずなのに「眠る」という奇妙な行動をとる少女が現れるところから始まります。

彼女は人類に助けを求め、かくして壮大な「ゲーム」が始まるのですが、ゲームのルールの下に星間戦闘の下敷きを隠した序盤の展開から後半への下りは、色々と種明かしされていく流れが楽しかったです。

4編目の「占職術師の希望」はサイキックSFですが、人の天職を見抜ける超能力の持ち主というアイデアが面白く、魅力的でした。

僕などはその気持ちが強いのですが、自分の仕事が自分に合ってない気がして、どこかに天職があるんじゃないか、誰か教えてくれないかと思っている人は、まあ大抵の人がそうなんじゃないかと思います。

読んでいると、一つ自分も天職を教えてほしいと思ってしまいます。さてその超能力者は、逆に言えばそれ以外は何もできないのですが、ある知り合いのつてからテレビ局に行ったとき、爆弾テロに巻き込まれます。

そこで見かけた「テロ扇動を天職とする男」。そいつを捕まえるために、どのような手段をとるのか。

かっこよい話ではなく、泥臭い話なのですが、そこが妙に現実味があって面白かったです。

最も印象深いのは、やはり最後に収録された「青い星まで飛んでいけ」ですね。

星間文明をもつ知性種族同士の出会いと融合をテーマに描かれたこの話は、究極のボーイミーツガールともいえる内容かもしれません。なんせスケールが数万年単位のタイムスパンで描かれる、恒星間を日常の距離とする話ですからスケールがでかい。

それだけでかいスケールですが、描かれるのはままならない人(種族レベルですが)の心のすれ違いと開花なのですから面白いです。

ばらばらと言われるだけあって、実にバリエーションに富んだ物語が展開されていました。どれも面白かったです。

さて、しばらく日本人作家の本が続いたので、次は久しぶりに海外作者の作品を読んでみましょうかね。



たぶんねこ [本と雑誌]


たぶんねこ (新潮文庫)

たぶんねこ (新潮文庫)

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫


読了しましたよ、と。ふと気が付いたら昨日に続けてばけものネタですな。

さてしゃばけシリーズ、文庫の方の新刊でした。

今回は、体が弱くて隙あらばせっせと寝込んでいる長崎屋の若だんなが、珍しく二月も病にかからなかったということで、周りの妖たちが「今度こそ若だんなを丈夫にしてみせる!」と意気込み、5つの約束を交わして。

ひとつひとつ、守れなくなるお話です(笑)

ああなんというフラグ回収劇。畠中先生は本当にいろいろな作品をお書きになりますね。

今回若だんなのもとに舞い込むのは、商家の跡取り息子同士の、商いの競い合いの話、見合いをとりもつ話、若だんなの数少ない友である栄吉が後進の指導に頭を悩ませる話、いつも頼もしい兄やの仁吉が困ったことになる話。そして幽霊の面倒を見る話、とまあ1冊の中にバリエーション豊かでありますね。

それぞれをこまごまと解説するのは面白さをそぐので今回は避けておきますが、どの話もあれよあれよという間に話が思わぬ方向に転がって、でもまあなんだかなんとなく、始末が付く話でございました。

そのなかで妖たちは若だんなを助けようとしたり、好きに動いて困らせたり。若だんなもせっせと厄介ごとに巻き込まれて体を壊しながら、せっせと世話を焼いてしまうお話です。

若だんなの周りには、妖をはじめとして多くのヒトビトが、いつの間にやら集うようになっています。

何かと世話のかかる若者である若だんな。普通の輩なら、どれほどのお人よしでも早々にさじを投げてしまうこところですが、どういうわけか彼にかかわったひとびとは、なにくれとなく後々もかかわっていくことになり、自然と縁がつながっていきます。それは不思議でもあり、またこの読み物の面白いところでもあり。

彼らがついつい集まってくるのは、危なっかしい若だんなに保護欲を刺激される部分は確かにあると思います、ですがそれだけじゃないのだな、と、今回のんびり読んでいて思ったりもしました。

自分の面倒を見ることさえ人に頼らざるを得ない若だんなですが、かかわった誰かを見捨てるという選択肢は、まあほぼ取らない。なんだかんだでせっせと世話を焼いてしまう。

そのあたり、若だんなの懐の深さというか、包容力のようなものを感じます。

体が弱くて余裕がない分、自分に何ができるかを見極めることができ、その中で己ができる最大のことを、ついついやってしまう。

そんな若だんなが、みんな好きになっちまうんですねえ。

読者もその返上にほだされてしまうから、なんだかんだで読み続けてしまうのかもしれません。

この本には実に様々な妖たちが登場してきますが、気が付けばこのシリーズの本が、それ自体、妖になってきているような気もします。

そんな魅力を感じる読書でした。

さぁて、次の続きはいつ読むことができるやら。

のんびり楽しみに、待つことにいたします。


砂星からの訪問者 [本と雑誌]


砂星からの訪問者 (朝日文庫)

砂星からの訪問者 (朝日文庫)

  • 作者: 小川一水
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2015/08/07
  • メディア: 文庫


今月のSFノルマは引き続き小川一水。

恒星間に文明をかけ橋させる段階に至った人類の最前線、観察を目的とした宇宙艦隊「ダーウィン機関」が舞台。

彼らが何度目かに出会った異星人との邂逅を描いた一冊です。

主人公はカメラマンのタビトと、妙に人間臭いサポートAIのポーシャ。

割と無鉄砲気味で勢いで動くタビトと、彼にかなり感化されつつも一応理論で動くポーシャのコンビは実にいいバランスだと思います。

その性格というかフィーリングというか、柔軟性で異星人とコンタクトを取りやすい傾向にある彼が出会ったのは、猫のような獣人型宇宙新のンールー。

人類同様、明らかに恒星間を旅する技術の蓄積と、航海術を持つ割に、あまりに野生の本能に忠実で秩序だった文明を築くことができなさそうなンールーたち、フィーリアン。

ストーリーは主に、この種族と文明を少しずつ解き明かしていく形で進行します。

今回の作品は主人公となるキャラクターはいますが、どちらかというとその主人公たちが解き明かしていく舞台設定というか、謎の数々を紐解いていく形の作品という気がします。

言ってみればファーストコンタクトとフィーリアンの世界が、本当の主人公といえるかもしれません。

フィーリアンの、そのあまりにも奔放な性質にタビト達は三山に振り回されるわけですが、タビトがンールーとどうにかコミュニケーションを取れると用になったことを皮切りに、少しずつ彼女たちの世界が買いらかになっていきます。

その中でタビトとポーシャは重要な役割を果たします。


世界設定として、「世界を観察しつくした人類が、さらなる観察対象を求めて宇宙に乗り出している」という世界設定は新鮮で面白かったです。

そういう艦隊ですから、もちろん荒事も排除しませんが、第一目的が観察、解析、異星文明の発見なので、よくあるスペースオペラ的な大艦隊戦という構図には重きを置かないのがまた面白かったです。

そういう話ですから、読ませる動機は、読者の知的好奇心ですね。そういう意味ではジェイムズ・P・ホーガンの作品に通じるところがあるのかもしれません。いやまあ俺があの人の作風好きだから結びつけて考えてしまうだけかもしれませんが。

ともあれ、楽しい読書でした。小川さんの本はもう何冊か買いためてあるので、のんびり読み進めたいと思います。


魔法の船 [本と雑誌]


魔法の船―「歌う船」シリーズ (創元SF文庫)

魔法の船―「歌う船」シリーズ (創元SF文庫)

  • 作者: アン マキャフリー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1995/08
  • メディア: 文庫


今月のSFノルマはアン・マキャフリー&ジョディ・リン・ナイの「魔法の船」

SFシナリオ書くための勉強で始めたSFノルマもすっかり毎月の楽しみになってきていますな。

今回は「歌う船」シリーズの中の1冊です。

シリーズおなじみ、幼少期に判明した先天性障害を克服するため、早い時期から肉体から機械の体に置き換えたシェルパーソンとその相棒が活躍するシリーズ。

今回は、コンビ成立までの紆余曲折を描いていた今までと違い、すでに14年ものキャリアを持つベテランコンビが、まだ見ぬ異星人とのファーストコンタクトを目指して冒険を繰り広げる話です。

シェルパーソンのコントロールする頭脳船、キャリエルと、筋肉役のヒューマンの相棒、ケフのコンビは深宇宙探査のベテランコンビ。

二人は宇宙をかけるスペース・マンでありながら、<神話と伝説>というなりきり・ファンタジー・ゲーム。いわばバーチャルリアリティを利用した、進化したTRPGの愛好者というユニークな個性の二人であります。

この辺読んでてGM者としては思わず吹いた部分だったのですが、読んでいるとキャリエルというのはなかなかに優秀なゲームマスターのようです。

さてそんな二人が有望な星域で発見したのは、毛深いヒューマノイドの農耕民族が暮らす惑星オズラン。これまで知性に近いものは見せても、星を渡るような種族とのファーストコンタクトは夢見てもたせなかった二人にとって、有望な文化を持つ惑星です。

ここでは農民たちの支配階級として魔法使いたちが覇を競っており、二人はその権力闘争に巻き込まれながら少しずつこの惑星の謎を解明していきます。

基本的に非武装であるブレイン・ブローン・チームであるキャリエルとケフは、強力な魔法を操る彼らを相手に何度もピンチになりながらも、農夫の中でも賢さを確立するにいたっらブランネルや、魔法使いの美女プレンナなどの協力を少しずつ得ることにより、この惑星がかつてない危機に陥っており、それを救うには革命が必要なことに気付きます。

疑心暗鬼と暗殺、権力の簒奪を美徳とする、強力な魔法を操る魔法使いたちを相手にそんなことは不可能と思われますが・・・?


ここから先は読んでのお楽しみですね。


解説にもありますが、この作品でのマキャフリーの面白いところは、SFという世界に魔法を大きな題材として登場させ、その魔法にきちんとしたSF的なギミックを仕込んでいるところです。

未開惑星でペテン師の魔法使いを演じているキャラクターが登場する作品は、以前読んだことがあるような気がしますが、この世界では魔法は確かな技術として確立しており、師から後進へと受け継がれている物として描かれています。

その様式と伝統に隠された、先史を紐解き、惑星の謎を解き明かしていくSF的な側面と、強力な魔法使いたちを相手にした命がけの大立ち回りのスペクタクルの両立が、この1冊の魅力といえるのではないかと思います。

これまでのシリーズも面白かったですが、この本はまた一つ別ベクトルの面白さがありました。

面白かったです。大変良い読書でした。

お勧め。